なまもの、けものブログ

70%ニートが、なんてことないことをかくブログです。

『白ゆき姫殺人事件』とは、『湊かなえ殺人事件』である。―本の感想―

 

今日は海の日でしたが

僕は一日家にこもって本を読んでいました。

 

今日読んだのは、この本です。

 

 

白ゆき姫殺人事件

白ゆき姫殺人事件

 

 

 

映画化もされていたので、興味があり

図書館から借りてきました。

 

湊かなえさんの作品は結構読んでいます。

 

僕にはあまり理解できない女々しいドロドロしさが

新鮮で好きだからです。

 

湊かなえ作品って、

基本的に“完全被害者”は登場しません。

 

殺す人も、殺される人も、傍観者も、

みな闇を抱えている。

腹黒女がじゃんじゃん出てきます。

 

そのブラックな感じをライトに、かつ丁寧に表現していくのが

湊さんはとても上手いです。

 

だから、腹黒女の感覚が分からない僕でも

すっと読むことができます。

 

 

なので、

ブラック、ドロドロ、かかってこいや!!

というつもりで読んだのですが、

 

『白ゆき姫殺人事件』は

思った以上にドロドロしていませんでした。

 

ドロドロしていなかった、というより、

ドロドロできなかった、といった方が正しいでしょうか。

 

なぜ、ドロドロできなかったかということは、

本作の特徴に関係します。

 

 

このお話は、

複数人の噂話、雑誌、SNS、によって

人が「つくられていく」物語です。

 

大ヒットした『告白』では、

登場人物の独白のみで物語が進行しましたが、

本作では、雑誌、SNSと媒体も多角的にしたという点に

大きな特徴があります。

 

この特徴が、裏目に出てしまったなという印象です。

 

もちろん、

現代のメディア事情を考慮し、利用したことで、

タイムリーな話題でリアリティを持たせ

読者の興味を惹いたことは良かったと思います。

湊ファンも、独白形式の物語展開に変化を欲していたと思いますから。

 

 

 

ただ、湊さん自身新たな試みであったためか、

噂話、雑誌、SNS複数媒体を、

並行して物語の中で進めていく

ということに一番重点が置かれてしまった気がします。

 

なので、

多媒体をうまく物語内に閉じ込めることには

ギリギリ成功していますが、

湊作品に欠かせない2つが、中途半端になってしまっています。

 

一つ目は、

湊かなえ作品の醍醐味である

女々しいドロドロ。

これが、イマイチなのです。グッときません。

 

もっと僕は、内面の奥底までの表現を期待していました。

奥底を表現するためには、やはりインタビューよりも、

「当事者」章のような完全な独白が有効かなと思います。

 

 

二つ目は、

全体の整合性。

 

一度読んだだけでも、

「あれれれ、な、なんかおかしくない?」

と思う点がありました。

 

 

・殺害の方法が、城野の「儀式」と酷似している点の説明

・城野籠城の言い訳づくりのために無理やり作り出したとしか思えない、ブラザーズの事件

・たまたま、駐車場があるものなのか

・三木がコンサートにやはり行くといったのが事件直前であるにも関わらず、

犯人が用意周到すぎる

・赤星みたいな記者はいない。本当の記者はもっと卑怯で、知的で、冷酷。

・犯人の動機の説明、これで充分といえるか。

・資料の新聞記事の完成度の低さ

 

などなど。

 

 せっかく、SNSを利用しているのに

SNSによって物語がとんでもない方向に進んでいくということもなく

この点ももったいないなと思いました。

 

現実のSNSの方が、

もっと過激に、人は作られている。

 

 

散々に書いてしまいました。

Amazonレビューでも、かなり酷評されています。

 

しかし、僕は

『白ゆき姫殺人事件』とは

湊かなえさんにとって、

実験的小説だったのではないかと思います。

 

僕が期待外れだと感じたのも、

湊カラーが弱かったからだと思います。

これまでの湊かなえからの脱却、

そして新たな世界の創出の第一歩として

この作品は位置づけられるべきではないでしょうか。

 

つまり、

『白ゆき姫殺人事件』とは、

『(既存の)湊かなえ殺人事件』でもあると思います。

(湊さん、白くて透き通るような雰囲気の方ですよね。白ゆきを連想させます)

 

 

『白ゆき姫殺人事件』

本作以後の作品が気になったので、

チェックしてみようという気になりました。

(最近も本屋さんに新刊が並んでいましたね。とても楽しみです)

 

 

山女日記

山女日記

 

 

 

また、映画では

小説ではややほったらかしにされていた人物を

どう描くかも気になるので

こちらもDVDがでたら見てみようと思います。

 

ではまた。