スーツ「武装」して、都会を闊歩してきた―ニート、ラストラン。―
今日は久しぶりにスーツを着て外出。
大学の卒業式以来です。
(ああ、もう4か月も前になるのか、
はやいなあ。)
前回スーツを着たときより、
肩書きも、人とのかかわりも、はつらつさも、
失われましたが、
あのときより、
いまは元気です。
*
午後1時。出発前の自宅。
「あちースーツだりー」
と思って、
着替えるのに5分くらい躊躇しました。
やっぱ私服でいっかなー
Tシャツ短パンでいっかなー
と、一応私服のコーディネートをして床においてみたりもしたけれど、
結局スーツを着ました。
暑いっす。
就職活動してた時も思ってたのですが、
世の男たち、すごいです。
なんで、あんなの着て暑い中、颯爽と闊歩できるのだろう。
暑さ感じないのかよ。汗腺ないのかよ。
僕は暑がり&汗っかきなので、無理。
さすがに上着は手にもって出発。
それでも、玄関出て最寄り駅着くまでに、もう額に汗が。。
テンション下がります。
代謝が悪いのよねえ、と嘆くダイエット中のそこの奥さん、
代謝がよくても、いいことだらけではないのですよ。
そして、暑がり&汗っかき&冷房に弱い僕は
電車に乗ると、くしゃみをして震えだすのです。
もうほんと、テンション下がります。
*
そんなこんなで、都会の喧騒に突っ込んで行ったのですが、
なんだか今日は気分がいい。
背筋は伸びるし、歩くスピードも速い。
いつもは、人に追い抜かれることばかりなのに。
なぜだろう?
単純です。スーツ着てるからです。
僕は、単純なヤツなのです。
こんな身の上にもなって、
まだ体裁を気にする自分が存在するわけです。
僕って弱い人間だなとつくづく思います。
結局、何かに頼っている。
いつもは、
目線はまず下向きだし、とぼとぼ歩くし、
よく人にぶつかるし。
ニートになってからはますます、
この傾向が強まった。
なんかすいませんね僕みたいな者が、みたいなことも少し思いながら
歩いてた。
でも、今日はなんか違った。
おそらく、スーツを着るって、
社会を着るってことなんでしょうね。
社会を武装するというか。
スーツ着ると、
都会の駅の黒アリの雑踏に紛れて、埋もれて、同化して、
一生懸命働いているアリたちと同じように、
自分も社会の縄張りの中にいるんだと思わせてくれる。
女装すると、自分が女になったように感じるのと同じく、
あくまで擬似体験ですけどね、
ゼッタイにアリにはなっていないんですけどね、
だけど、
なんだか胸張っていいような気持ちになってくるのです。
スーツってすごいかも。
*
けれど、反対にこうも思ったわけです。
この黒アリたちから、スーツ武装を解いたら、
みんな颯爽と闊歩するだろうか、と。
おそらく、バリバリ働いている人は
なんとも思わないでしょうが、
マドギワ族の方達とかは、
心もとなく感じるでしょう。
武装していないありのままの自分で、「社会」を身にまとわす自信がないから。
スーツを着ると、気が引き締まる、
これの裏返しは
スーツを着ないと、気が引き締まらない、であり
スーツ武装しないと、社会でやっていく自信がない
なのだと捉えることも可能だと思います。
*
武装としてのスーツ、
これを考えたときに、
どこにいくでもスーツを着るおじいさまがたを思い出しました。
彼らは、社会人よりも、スーツに武装の役割を求めていると思います。
リタイアして、年金生活して、社会に貢献する機会が少なくなって、
でも、これまで社会に尽くしてきたことを示したくて、
社会性が失われることを恐れて
結果スーツを着るのではないでしょうか。
その人自身に魅力があれば、
醸し出すオーラがあれば、
武装なんてする必要ないのに。
*
でも、武装することによって、
リタイア後の自分に自信が持てるなら、
黒アリの一員として颯爽と丸の内を歩けるのなら、
それもありなのかなと思います。
まさに、格好つけているわけですから。
ありのままで生きていくことも、大事。
でも、
格好つけることで、はじめて自分を生き、社会を生きられる人だっている。
そういう人の方が多いんじゃないかな。
だってそんなに人間はありのままで強い存在ではないですから。
全ての人が、ありのままで、国家を雪国に変える力を持ってはいないですから。
ありのままで、いい。
格好つけて、いい。
この二つを同時に受け入れられる社会になれば、
生きやすいのかなと思います。
*
なんだか、武装って
スーツに限らず、いろいろなことに見られるような気がします。
肩書きだって、そう。
人は、いろいろなものを武装して、社会で戦っている。
武装しないと、やっぱ戦えないのかな。
戦わないと、生きられないのかな。
*
というわけで、
スーツ着た結果
バイト決まりました。
ニート卒業となりそうです。
といってもアリの足元には到底及ばないので、
僕は、もうしばらく、裸一貫で戦地を這いつくばろうと思います。
ではまた。